Interview with: Sesotunawa

Interview with: Sesotunawa

フィリピンのミンダナオ島南部にあるセブ湖には、さまざまな芸術を作り上げてきた先住民・ティボリ族が暮らしています。夢で見たお告げを元に、織物を作るということから「夢見る織り手」として主にティナラク織で有名な民族ですが、真鍮鋳造やビーズ細工の技術を継承していることを知る人は少ないです。特に、真鍮鋳造の技術は何世代にも渡って受け継がれてきた名誉ある伝統であり、結婚の持参金や物々交換などに使われてきました。真鍮とビーズの作品を通じて、ティボリ族の文化と芸術の継承、そして職人たちの持続可能な共同体システムの構築を目的としたブランド・Sesotunawa(セソトゥナワ)にお話を聞きました。

──Sesotunawaを始めたきっかけを教えてください。
当時のティボリの人々は、真鍮製品を作る技術はあってもそれを販売するための知識が乏しく、人件費や材料費を考慮せずに買い手に値段を決めてもらうことが多かったです。そのため、生活が維持できなくなり多くの真鍮職人が消えていきました。その問題にアプローチするため、真鍮職人のジョエル・ブルントと人類学を研究しているカール・ロサノと共同で2017年にSesotunawaを設立しました。
Sesotunawaは、ティボリの職人(主に真鍮職人やビーズ職人たち)が独自の技術を高めて発展させ、ビジネスの知識を増やすことができる場所です。そして、職人たちにビジネスを通して学ぶ機会を作ることで、独立した起業家として成長することを期待しています。

──ブランドを始める中で一番大変だったことはありますか?
スタート時に遭遇した大きな課題としては市場へのアクセス不足、パートナーである職人のビジネスに対する自信のなさ・知識のなさ、持続可能な生計手段へのアクセス構築、ティボリ文化の衰退などでしょうか。

──ブランドを継続していく上で大切にしていることはありますか?
持続可能な生活を提供し、私たちの文化が生き続けるように協力し合うことで、私たちは長年にわたって活動を続けてきました。Sesotunawaでは、先住民族の職人を含むすべての人が、尊厳のある生活──持続可能な生活、自分で判断できる適切な知識、そして自分たちのアイデンティティと文化が現在のティボリの世代だけでなく、次の世代にも受け継がれるように彼らの潜在能力を最大限に発揮できるような生活を送らなければならないと考えています。

──Sesotunawaと職人の関係性を教えてください。
Sesotunawaはティボリが所有するブランドです。その名前は、ティボリの価値観である“kesesotunawa”、つまり一緒に働くことからヒントを得ています。私たちの職人とボランティアコミュニティはこの価値観を実践するために、共に学び、共にビジネスを成長させています。

 

 

──一つの作品ができるまでの過程を教えてください。
ティボリの伝統的な芸術である“Temwel(テムウェル)”は、古くから伝わる真鍮鋳造の技術です。
具体的な制作過程は、蝋型を作ることから始まります。蝋で作った原型のまわりを粘土で包み、乾燥させ、煮ます。蝋を溶かすことでできた空洞に金属を溶かして流し込むことで、それぞれの製品を形成します。その後、鋳型を壊し、磨き上げます。この一連の工程で、まったく同じものはできないのです。Temwelの技は、精神的な作業でもあり、ティボリでは真鍮職人(タウ・テムウェル)が火と土と金属の精霊を使いこなすことで、作品が完成すると考えられています。
すべての真鍮製品には、自然界のさまざまな要素から着想を得たデザインが施されています。これは、ティボリの真鍮職人とその生活世界との密接な関係を表しています。

──フィリピンは東南アジア唯一のキリスト教国と言われる中、「精霊を使いこなす」というのはアニミズムの名残でしょうか?
確かにティボリ族の精神性はアニミズムです。しかし、外部文化との接触により、彼らはイスラム教やキリスト教に入信しました。フィリピンの多くのコミュニティがそうであるように、ティボリ族も土着の精神性とアニミズムの習慣を残す方法を見つけ、キリスト教の信仰とアニミズムを融合させた独自の文化を発展させてきたと言ってよいでしょう。
現在、私たちの真鍮職人やパートナーの作家もクリスチャンとして活動していますが、お告げを信じ、儀式を含む精神的な信仰を行なっています。

──“サステナブル”や“エシカル”という点でブランドが取り組んでいることはありますか?
私たちの真鍮製品は、地元のジャンクショップから使われなくなった金属を調達し、それらをティボリの伝統技術であるTemwelの技法で一つひとつ手作業で作られています。私たちの製品の購入は、この伝統文化の継続を保証するものになります。

──今後のビジョンを教えてください。
現在は、ボランティアコミュニティがティボリの職人と一緒になってブランドを運営しています。私たちのビジョンは、ティボリの職人がビジネスの知識とスキルを身につけ、将来的に自立した起業家となり、彼らの生計と文化の持続性を確保することです。

 

Image via sesotunawa.com